これはフィクションです

32歳。男性。自営業。独身。

30歳。退屈。

こないだ知り合いに「あなた退屈なんでしょう?」と言われて「そうですね!」となりました。おっしゃる通り、退屈です。


22歳ぐらいから「会社員やらずに独立して食えるようになる」が目標で、それは去年に達成してしまった。

「こういう会社がつくりたいんです!」「こういうことがやりたいんです!」と元気に喧伝していた時期もあったが、どれも強い欲求ではなかったのだろう。


本質にあったのは「嫌なことを我慢しなくていいように、ひとりで仕事して生きていけるようになりたい」という望みで、じゃあそうなったその先で何をするのか?という話は、実は自分のなかに強いものはなかった。

ということは去年、行きたかった旅行先のホテルでのんびり過ごしながらも「自分が求めていたのはこの瞬間ではないな」と思い、つれつれ考えながら気づいたことです。


この人は、自分の人生から絶対に存在を許せないマイナスを削りたかっただけで、フラットになった後にやりたいことはあんまない。

週5日働くのが嫌で「自分の時給が1万円になれば月に30時間しか働かなくても暮らせるじゃん!」そんなことは考えて、そうなるよう工夫はしてきたが、いざそうなって時間ができたとしてもやりたいことは特になし。ハハハ。


22歳から7年間、独立だけが目標でやってきたので、張り合いがなくなり終わった感があるのは当然である。そして次の大きな目標がすぐに見つかるわけもなし。

逆に早くに目標見つかるのも困る。目標ができれば達成するまでは「未達成」の、常に×がつく人生になってしまう。まーた7年も追い続けたら40歳近いし。


アップダウンの激しい20代を「この人生疲れるなあ!」と愚痴りながら平穏を夢見て過ごしていたが、まさかあのスリルこそが自分の満足度を上げていたとは。

映画でよく見る、「結局あなたに普通の生活は無理なのよ」と奥さんに言われる、裏社会から足を洗おうとしてる主人公と同じじゃん。


今年いっぱいはこんな感じだろうな、と思う。

退屈ではあるが、仕事は順調に大きくなっている。会社は増収、自分の仕事も増収。おかげで「今年の収入は去年の2倍にする」という目標も問題なく達成できそう。


こういう順風満帆な状態を「退屈」って言ってる自分がやべえよな。贅沢なやつめ。お前の人間がダメだ。