これはフィクションです

32歳。男性。自営業。独身。

2021年1月22日23時51分

「これおもしろいなぁ。取材してまとめて、発信したいなぁ」

と思うものに久々に出会った。旅行先の新潟でたまたま入った喫茶店だった。

 

文章を書く仕事をしている頃だったら自分のブログにはしていただろう。

いまはもう辞めているのでそんな気力はなかった。それでも、誰かに良さを伝えたくなるようなお店だった。

 

 

しかしまあ、「良いお店ですね!記事にしますよ!」

というのもお節介なのだろう。店主さんは喜んだかもしれないが。

 

自分が発信力のあるメディアの人間で、あの店を記事にして宣伝して、本当に客が来て売り上げが増えて人気店になったとして、、

 

そうなった時、自分がおもしろいと思ったあのお店はなくなるのだろう。



おもしろいと思ったのは、常連客のタバコやライター、お気に入りの小説が置いてある棚であったり、自分と店主のおばあさんと常連のおばさんと、そしてそこの店の猫以外には人がいない店内で、ストーブの小さなブーンという音と時折おばさんがめくる新聞の音だけを聞き、雪が降り始めた外の通りを眺めながら温かいカフェオレをすすることだった。

 

なので勝手ながら、あのまま大して人がいない店であってほしい。

 

 

なんか、こういうことは多々ある。

売れた結果、歪むこと。失う価値。店やモノだけでなく人もそう。