これはフィクションです

32歳。男性。自営業。独身。

9年前、新卒で入った会社を5ヶ月で辞めた。

9年前、新卒で5ヶ月だけ会社員してた。2ヶ月目からもうキツくて「俺は会社員がダメだ」と思って転職ではなく独立でいこうと思った。

同期40人ぐらいいたけど、上司に「同期のなかでお前がダントツで仕事できてない」と言われて「僕もそう思います!」と素直に返すぐらいには仕事できていなかった。

俺が仕事ができなさ過ぎることについて、偉い人たち3人がどう処遇するかを議論しているのを横で聞いていたこともある。



でもあれはあれでいい経験で、今の自分を作る大事なものの一つ。

 

過去に戻って会社選びをやり直せるとしても、俺はあの会社に入り、5ヶ月でやめると思う。




あの5ヶ月で、自分が何者か?の確認ができた。

 

自分に何ができて、何ができないのかが分かった。分かったのは主に「できない」のことだけど。

 

でも本当にダメだったおかげで「会社員ダメだ」と諦めがついた。「自分が社長でやっていくしかない」と覚悟は決まった。



「自分のことを理解してくれて、上手に立派な社会人に育ててくれる」

 

俺にそんな人はいないし、そんな会社もないのだということを悟った。




会社ってつまんねえな。とも思った。もっとおもしろいものだと思っていた。



先輩の女性社員が俺に聞いてきたことがある。

 

「あんたの同期の〇〇と△△って付き合ってんの?」

 

知らねえよババア!何に興味持ってんだよ、気持ち悪いな!ここは会社で、仕事をするところだよ!学校じゃねえ!



会社の記念パーティーで、新卒が余興させられるのも嫌だったね。質の低い文化祭。企画や練習してる時間は給料でないし。

 

休みの日に余興の練習の予定入れられて、だるいからサボったら同僚の女から鬼LINEが来たりした。うざかった。



会社って学校みたいだな、と思った。学校が嫌いだった俺にとっては、絶望に近い感想だった。



「でも仕事って、会社って、もっとおもしろくできるはず」

 

とも思った。おもしろい会社がないのなら、自分で作ろうと。



その気持ちは今も変わってない。やらされる労働はつまらないけど、自分で考えた仕事はおもしろい。

 

働く人にとってもいい会社にしよう、という気持ちがあればそうなる。みんな満足して、長く働いてくれる。




誰しも今の自分というのは、これまで起きたすべての経験によってできていて、楽しかった経験だけではなく、苦しかった経験も、あとから見れば必要な経験だったと思える時が必ず来る。

 

人生に無駄なことは起きない。