俺が考えた新しいサービスを打ち出すのだが、打ち出した先の未来が見えずにいた。
「ユーザーが増えて、収益が出て…。それで?」
その業界で誰もやっていなかったことをやるので、絶対になにかが起こるはずなのだが、それが分からなかった。
そのサービスで成し遂げたいことはあるが、いまひとつ気が乗らない。
こういう時はとりあえず休もうと思ってある漫画を読んでいたら、その主人公がまさにいま俺がいる業界で新しい試みに挑戦する話だった。
業界の慣習や伝統を無視して暴れまわる主人公。
そうそう、こういうことがしたかったと共感しながら読んだ。
そこで俺も「サービスと顧客の未来」とかではなくて、
「いま怒りを感じている壊したいもの」
を考えることにした。
「業界にいる既存の連中も新しい連中も仕事が半端すぎる。だからわざわざ俺がやらねえといけねえんだろうが。俺の仕事を増やすな。こうなったらお前ら全員の存在価値を失わさせてやる。
会社だけ潰したところで意味がない。なぜなら求める客がいれば仕事が、会社が復活するからだ。
だから俺が最高のサービスを作って、お前らみたいな半端者を求める人間が一人も出ないようにしてやる。客を全員、俺が奪ってやる」
と、ここまで書いたところで、そういえば昔も同じ発想でやっていたことを思い出した。
会社を辞めて転職して、そしたら転職先も微妙で、
「これは自分で満足いく会社をつくるしかない」
と燃えていた頃。
「最高の会社を作って、他の会社が全部クソだということを経営者にも従業員にも思い知らせてやる」
と思っていた。
「仕事を求める人間全員が俺の会社に入りたいと思うようになる。それなれば採用に困った他の会社も変わらざるを得ない」
とね。
良いお手本を作ったところで誰も真似しない。真似する気力も技術もない。だから、
「変わらないと死ぬぞ」
という脅しをかける。
自分という存在の危機。俺が作ったサービスで、業界の連中にそういうものを与えてやろう。覚悟しろ。